ホウ素系難燃剤(ホウ酸難燃剤)ソウファ。不燃液ソウファの主成分はホウ酸です。Boron-based flame retardants。ホウ素といわれても、一体どんなものなのか、あまりピンと来ないかもしれませんが、ホウ素は昔から暮らしの中で使われています。特にセルロース系材料との相性が良好です。
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ホウ素とは?
ホウ素はホウ酸塩(主にホウ砂)として自然界に広く存在しています。中国の宋の時代の書物『三因方』(1174年)に記述されている鉱物はホウ砂(ホウ酸ナトリウム)の結晶です。1808年にフランスの化学者ゲイ=リュサック、独立にイギリスの化学者デービーによって純粋なホウ素の分離に成功しました。
室温では比較的安定していて、高温になると空気中の窒素や酸素と直接反応します。この性質により、SOUFAは難燃剤・不燃剤として使うことができるのです。
暮らしの中のホウ素
害虫の駆除や目薬に
ホウ素あるいはホウ酸と名前の付くもので、害虫駆除剤として使われる「ホウ酸ダンゴ」があります。また、ホウ酸水溶液は目薬としてよく使われていました。若い世代では、理科の実験などで使ったり、スライムをつくるときに使ったりしたという人の方が多いかもしれません。今でも薬局でホウ砂を購入することができます。
耐熱ガラスや飛行機に
ホウ素やホウ酸という名前が付かなくても、ホウ素は暮らしの中で利用されています。
台所などで使われるパイレックスという耐熱ガラスには12%〜15%の酸化ホウ素が含まれています。普通のガラスは熱による膨張に弱いのですが、酸化ホウ素を混ぜることによって熱膨張率が下がるのです。
金属とホウ素の合金からつくられるホウ素繊維は鋼よりも強く、アルミニウムより軽いので、飛行機の一部の構造材としても使われています。
木材の防蟻・防腐に
ホウ素が害虫駆除剤としても使われる、と上に書きましたが、木材腐朽菌、シロアリ、ゴキブリ、ダニ、対策としても効果が高いことが知られています。そのため、木材保存剤としてホウ酸塩が利用されています。ホウ酸系防蟻剤としてこれからの普及が見込まれています。
ヨーロッパでは木材防腐用として主にホウ酸塩が利用されています。アメリカでも、1960年頃からホウ素系の木材保存剤が利用されています。
工業や先端技術でのホウ素
ホウ素は高温で酸素や窒素と反応します(SOUFAが不燃剤になる理由でもあります)。これを利用して溶鉱炉などで酸素や窒素を取り除く薬剤として使われます。
ホウ素は中性子(原子核を構成する素粒子の一つ)の吸収能力が高いという性質があり、原子力発電所などで中性子遮へい剤としても利用されています。
また、2001年に青山学院大学の秋光純教授らによって、平凡な化合物と思われていたホウ化マグネシウム (MgB2)が超伝導(特定の金属や化合物などを超低温に冷却したとき、電気抵抗がゼロになる現象)になることがわかりました。ありふれた材料であるホウ化マグネシウムの応用には大きな期待が寄せられています。
ホウ素は将来、今までに想像できなかったような利用法で私たちの暮らしの中に顔を出していくかもしれません。
ソウファとホウ素
このような長い利用の歴史があるホウ素を利用した、高濃度のホウ酸水溶液がソウファです。
ソウファはシックハウスの原因にはなりません。
ソウファで使用しているホウ酸は無機物なので、これを使用してもホルムアルデヒドなどシックハウスの原因となる化学物質が出ることはありません。
SOUFAと従来薬剤の比較
SOUFA(ソウファ)ホウ酸系防蟻剤※無機系 | 農薬形の薬剤(従来の物) | |
1.薬剤の効果 | 半永久 | 揮発性のため5年 |
2.人体への影響 | 極めて低い(腎臓機能を持つ動物 は排泄可能) |
農薬のため有害 (神経を刺激) |
3.含浸 | プレカットの段階でも処理可能 塗布処理も可能 |
塗布処理のみ |
4.アメリカカンザイ シロアリへの効果 |
16%以上の水溶液で完全 死滅。京都大学生存圏研究所で実験済み |
日本のシロアリには有効ですが アメリカカンザイシロアリへの 効果は不明 |
その他難燃剤との比較 Boron-based flame retardants
種類 | 物質名 | 特徴 | 欠点 | 難燃効果 | 環境負荷 |
臭素系 | テトラブロモビスフェノールA、デカブロモビフェニル、ペンタブロモジフェニルエーテル等 | 臭素系ガスを発生し酸素を遮断。ラジカルをトラップして燃焼抑制。酸化アンチモンと相乗効果あり。 | 燃焼により臭素系の有毒ガス、臭素系ダイオキシン類を発生。生体蓄積性の指摘。EUでは禁止の方向。 | ◎ | × |
塩素系 | 塩素系パラフィン、塩素系ポリエチレン等 | 塩素系ガスを発生し酸素を遮断。ラジカルをトラップして燃焼抑制 | 燃焼により塩化水素など有毒ガス、ダイオキシン類を発生。塩ビ同様、使用されない方向へ。 | ◎ | × |
りん系 | りん酸エステル、ポリりん酸アンモニウム等 | 炭化層を生成、酸素、熱を遮断。窒素系と併用が多い。 | 燃焼時に有毒なホスフィンガスを発生。環境ホルモン様作用の指摘。 | ◎ | × |
ホウ素系 | ポリホウ酸ナトリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛等 | 炭化層を生成、酸素、熱を遮断。 | 溶解度が小さいため、高濃度の溶液が必要。 | ◎ | ○ |
シリコーン系 | シリコーン樹脂 | Si-C無機断熱層を形成。 | 高価。燃焼効果が小さい。 | △ | ○ |
水和金属化合物 | 水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等 | 脱水反応により吸熱。無機断熱層の形成。 | 大量添加が必要(100部に対して150部)。 | △ | ○ |
窒素含有化合物 | りん酸アンモニウム、グアニジン化合物、メラミン化合物 | 窒素系ガスにより酸素を遮断。りん系との併用が多い。 | 燃焼効果が小さい。 | △ | ○ |