2025
12.22

ホウ酸系防蟻剤と壁内結露に関する考察

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ホウ酸系防蟻剤は人体への極めて低い毒性と、無機物であり半永久的に材料に定着するという特性から木造住宅の全構造材処理をされることがあります。その際に、ホウ酸に否定的な見解を持っている人々からは「ホウ酸は水に弱い」というポイントを執拗に指摘されます。そして、壁内結露においてホウ酸が流れ落ちて結果効果が無くなる可能性を指摘される事もあります。

その点についてレポートにてホウ酸系薬剤の検証が行われています。内容をまとめると下記です。

1. 結露による溶脱の有無

資料では、木材の表面に意図的に結露を生じさせる「結露操作」を20回繰り返す試験を行っています

  • 試験結果: 大量の流水にさらす耐候操作ではホウ酸の溶脱が見られましたが、結露操作をした試験体については、ホウ酸の溶脱は見られませんでした
  • 見解: 木材表面に結露する程度の水分であれば、薬剤が流れ出してしまう心配はないことが確認されています 。

2. 結露がもたらす「拡散」というメリット

ホウ酸系薬剤は「非定着型」という、木材成分と化学反応して固着しない性質を持っています 。この性質により、結露が発生すると以下のような現象が起こります。

  • 材内への拡散: 木材表面に塗布された薬剤が、結露による吸湿(含水率の上昇)をきっかけとして、木材の内部へと拡散・浸透していきます 。
  • 浸潤度の向上: 試験では、結露操作前は25〜35%だった薬剤の浸潤度が、操作後にはベイツガで100%、スギやベイマツでも約75%まで上昇しました 。
  • 防護性能の維持: 内部まで薬剤が浸透することで、表面だけでなく材全体に防腐・防蟻層が形成され、長期的な効果を発揮できると考えられています 。

施工上の注意点と適した使用環境

資料では、ホウ酸系薬剤の優れた性能を認めつつも、その特性を活かすための条件を以下のようにまとめています。

  • 非接地・非暴露が原則: 雨水などの流水に直接さらされる場所や、地面に接する場所では溶脱が激しいため、使用は推奨されません 。
  • 壁内や構造材に最適: 外気に直接さらされない「壁体内」などの環境であれば、結露による溶脱の心配がなく、むしろ拡散効果による高い防護性能が期待できます 。
  • 環境・安全性能: 高温条件下でも揮発せず安定しており、居住環境を悪化させる可能性がほとんどない点も大きなメリットです 。

まとめ 壁内結露によってホウ酸が流れ落ちる懸念については、資料のデータ上では「問題ない」と言えます 。むしろ、適度な湿気は薬剤を木材の芯まで届ける手助けとなり、住宅の長期耐用化に寄与する特性として評価されています

結果として、壁内結露の発生は水溶性であるホウ酸をより浸潤させる手助けをするようです。なお浸潤したホウ酸はそう簡単には溶脱しません。ですから、室内結露においてホウ酸系防蟻剤の溶脱はリスクではないと言えます。

そもそも、結露が激しい住宅はそれ自体が問題ですし、仮に農薬系防蟻剤の場合は全構造材処理はあまり意味がありません。農薬系防蟻剤の場合、一定期間での分解がありますので材料中に効果が残らない場合は薬効が切れた後は元通り無防備な状態になり再施工も出来ません。ですから、全構造材処理をする場合はホウ酸以外の選択肢はありません。一部、考えられるとすればACQ材等でしょうか。

ホウ酸に否定的な意見を有している団体等は、「分解されないホウ酸が残っているのが危ない」「土壌に流れたら環境汚染につながる」と指摘していますが、分解されないから構造材への効果が持続するわけであり、また壁内構造材が流水を浴びる事は基本的になく、さらに、ホウ酸は土壌処理用薬剤ではないので土壌にまかれる事もありません。

全構造材処理を実施できるのは新築時のみです。全構造材のホウ酸処理を実施ている住宅会社はほとんどありません。大手ハウスメーカーが取り組み始める前に地域工務店等は差別化として考えられるのが良いかもしれません。

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