2025
12.16

農薬系防蟻剤を室内循環させたくない高気密高断熱住宅の場合、ヒノキ無処理土台で対応していいのか?

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ちょっと話が長くなりますが、農薬系防蟻剤を床下や壁内に散布したくないという高気密高断熱住宅を建築する会社から度々ご相談を頂くので、それらについて説明します。なお、結論としては「まあヒノキ無処理土台で法律的にはOKだけど、無処理はやばいと思う。ホウ酸処理がいいよ。」と言う話です。

大分遠回りして話しますが、どれも全体を理解する為には必要な話なので、時間のある方はお付き合いください。私も色々と調べたのですが、なかなかな答えが見つからなかったので、同じような悩みを持っている方は多いかと思います。


第1章:住宅の防蟻・防腐措置をめぐる法的根拠と業界の仕組み

住宅の防蟻・防腐措置の必要性は、建築基準法、住宅ローン基準、そして業界の自主基準という三層構造によって規定されています。

1.1. 法律の原則:「措置は必要だが、方法は問わない」

日本の建築基準法では、「地面から1メートル以内の部分への防腐・防蟻の措置」を講じるように規定されています。しかし、この規定には具体的な施工方法が明示されていません

  • 具体的な方法の欠如: 建築基準法は、「措置は必要」としていますが、この措置に具体的な方法(薬剤散布など)は明示していません
  • 「薬剤散布に限定されない」主張の根拠: 薬剤散布に伴う健康リスクを懸念する自然派建築士等の中には、「その措置は薬剤散布に限定されない」と主張する意見があります。法律に薬剤散布とは書かれていないため、防蟻防腐効果があると「証明」できるならば、薬剤を使用しない方法でも建築基準法はクリアできるという論理です。
  • 「証明」の困難性: しかし、実際にこれを「証明」しようとすると、莫大な費用と時間がかかります。認定薬剤と同等の効果があると証明できる試験機関は限られており、たとえ試験結果を提出できたとしても、それが「有効な防蟻防腐措置」として判断されるかどうかは各建築主事等の判断になります。また役所側の担当者が防蟻防腐措置について詳しいとは限らないため、単純に拒絶されてしまう可能性が高いのです。

1.2. 認定薬剤の必要性:時間とコストの劇的な削減

建築基準法の具体的な指示がない中、住宅業界は第三者機関の認定に依拠することで、この「証明」の困難さを回避しています。

  • 第三者機関の担保: 木材保存剤には、日本木材保存協会(JWPA)と日本しろあり対策協会(白対協)の認定があり、認定を取得するにはJIS K 1571:2010によって評価され、その性能基準を満たす必要があります。
  • 住宅建築仕様書への記載: 住宅ローン(フラット35など)を受ける際の基準となる住宅建築仕様書には、両協会の認定薬剤が防蟻・防腐性能がある薬剤として記載されています。
  • 実務上の選択: 自身で1棟のために試験を行うよりも、両協会の認定薬剤処理を行う方が、有効な防蟻防腐措置として判断され、時間とコストが圧倒的に削減されます。それ故、ほとんどの会社は認定薬剤を利用した現場処理を採用しているわけです。

1.3. 劣化対策等級3と土台の例外規定

現代の住宅では、住宅ローン金利の優遇措置などのため、劣化対策等級3という基準を満たす住宅の建築が主になっています(長期優良住宅やフラット35Sが該当)

  • 土台の基準(K3相当): 劣化対策等級3に適合するためには、土台に関して「K3相当以上」の薬剤処理が必要とされています。これは、現場での表面塗布ではダメであり、薬剤を多く注入した材料(加圧注入材など)を指します。
  • 処理免除の例外: ただし、土台に関しても薬剤処理が免除される樹種があります。それが「耐久性D1の樹種の心材は薬剤処理しなくてもいい」というルールです。これ故、「総ヒノキ」の住宅などは薬剤処理が不要という解釈が生まれます。

第2章:高気密高断熱時代の「農薬リスク」

現代の住宅建築の進化は、従来の農薬系防蟻剤の使用を根本から揺るがしています。

2.1. 農薬系防蟻剤の揮発成分が室内に循環する

高気密高断熱住宅では、従来の住宅と比べて、農薬系防蟻剤の揮発成分が居住空間に侵入するリスクが格段に高まります。

  • 空気の出入りの制限: 高気密高断熱住宅は、建物内の空気の出入りを大幅に制限し、隙間がないように建築されます。
  • 全館空調と床下の空気循環: さらに、全館空調で床下の空気も循環させるタイプの住宅が多く採用されています。
  • 揮発成分の拡散: この場合、床下に施工した農薬系防蟻剤の揮発成分が、従来の住宅のように希釈されることなく、積極的に室内に送り込まれることになります。これは住人にとって望ましいことではありません。従来の住宅であれば床下や壁内で揮発していた農薬成分が、積極的に室内に送り込まれるという事態となるのです。

2.2. 住宅会社の「薬剤省略」という逃避論理

住宅会社も、こうした健康リスクを理解しているため、防蟻剤の施工をためらいます。その際に、ヒノキ土台の免除規定が都合の良い解決策として利用されます。

  • 嫌われる農薬施工: 従来の農薬系防蟻剤は安全になったと言われていますが、それはあくまで積極的に摂取しない状況が想定された上です。高気密住宅で室内に揮発成分が循環するとなると、施工は嫌がられます。
  • 「ヒノキ土台」の活用: その際に都合がいいのが「ヒノキの土台、柱、筋交い等を利用して薬剤処理を省略する」という方法です。これにより、薬剤が住宅内に揮発する心配はありません。
  • 防蟻基礎パッキンとの組み合わせ: これに近年採用が進んでいる防蟻基礎パッキンを組み合わせ、「薬剤に頼らない防蟻処理が完成した」とPRすることになります。なお、この防蟻基礎パッキンはシロアリに対する効果は認められていますが、建築基準法でいうところの有効な防蟻防腐措置には該当しない旨をメーカーも注意喚起しています。したがって、あくまでもヒノキを利用したから薬剤処理を省略するという論理が通っているわけです。また、現場からは必ずしも防げるものではないのではという意見と対応履歴があるようです。

第3章:崩壊する「ヒノキ神話」と業界の不作為

薬剤処理の省略の根拠とされる「ヒノキ」の耐久性には、学術的根拠が乏しい歴史的な誤解が絡んでいます。

3.1. ヒノキチオールの誤認と食害リスク

  • ヒノキチオール神話の誤解: シロアリに効果のあるとされる成分に「ヒノキチオール」がありますが、これは実は日本のヒノキにはほとんど含まれていません。もともとタイワンヒノキに多く含まれる成分であり、名前から日本のヒノキに多量に含まれていると勘違いしている人が多いのです。大工出身の社長などでも「ヒノキにはヒノキチオールが含まれていてシロアリに食われない」と発言することがあります。
  • 食害の現実: 当社(SOUFA)の自社試験では、ヒノキの辺材、心材の食害試験を実施した結果、心材も普通に食害を受けました。シロアリは木材なら何でもかじるため、ヒノキとスギが並んでいればスギが先に食害を受けますが、それが終われば次はヒノキが食害を受けます。
  • 望ましい対策: ですから、実際にはヒノキを土台に使用したとしても、薬剤処理をした方が良いのです。

3.2. 辺材処理の誤解と建築基準法違反の現状

  • ルールの適用: 薬剤処理が免除されるのはあくまでも「心材」のみに適用されるルールです。心材以外が含まれている材料の場合は、K3相当の処理が必要となります。
  • 現場の不作為: しかし、ヒノキの土台であれば何でも処理不要と考えている会社や設計士はかなり多く、検査機関もそこまで厳密に理解していないため、OKと判断するケースがあります。
  • 問題点: これは、土台が心材のみではない場合、事実上の建築基準法違反になります。確認機関もOKを出している現状では、ほぼ気が付かれないのが現状です。

第1部では、ホウ酸系防蟻剤の採用を阻む法的・技術的な制約、そして高気密住宅で問題となる農薬リスクと、その回避策としての「ヒノキ土台利用」という住宅メーカーの逃避論理について解説しました。

第2部では、現場の営業担当者や防蟻施工会社の視点に踏み込み、なぜ農薬系防蟻剤が依然として主流なのか、その構造的な理由を解き明かします。


第4章:住宅会社と営業担当者の「採用しない論理」

多くの住宅メーカーがホウ酸処理を採用しないのは、顧客の短期的な評価と、営業担当者の行動原理に理由があります。※あとコストですね。

4.1. 営業マンの「短期評価」とコストの論理

住宅建築後すぐに防蟻被害にあうことは稀です。この「時間が経たないと差が出ない」という特性が、ホウ酸の普及を阻んでいます。

  • 農薬効果の持続性: 実際に農薬系防蟻剤でも5年程度は薬効があり、被害は最小限に留まります。
  • 評価の不変性: これはすなわち、販売後5年程度は、どんな防蟻剤を利用してもお客様からの評価は変わらないということを意味します。
  • 営業の動機: 営業マンは、短期的に評価が変わらないにもかかわらず、やや費用が高くなるホウ酸系を進める動機に欠けます 。住宅の契約を獲得することが最優先であり、お客様にとって分かりやすいテーマではない「防蟻」について深掘りすることは、営業上のメリットが少ないのです。

4.2. 知識の専門性と標準仕様の壁

防蟻処理は、住宅建築に必要な無数の知識の一つに過ぎません。この知識の専門性の低さが、ホウ酸の採用を阻みます。

  • 専門性の限界: 住宅会社は住宅全体のプロですが、木材それ単体の保存処理にはそこまで詳しくありません。防蟻剤の種類に精通しているという担当者、特に営業マンにはほぼ存在しません
  • 標準仕様の固定化: 住宅会社には標準仕様というものがあり、防蟻施工に限らずあらかじめ設定されている材料や施工方法があります 。お客様はあまり詳しくないですし、まだ見ぬ先の不安をあおることを避けるため、防蟻施工は複数の選択肢から選べるように設定されることはまずありません 。
  • 知識不足ゆえの拒否反応: ホウ酸系防蟻剤は、従来の農薬系とは規格や施工方法が異なるため、担当者がよく分かっていない場合、話が出ると嫌がる営業マンもいます。これは、知識のアップデートや標準仕様の変更が手間だと感じるためです。

4.3. 顧客側が主体となる「ホウ酸指定」の動き

近年、状況は変わりつつあります。インターネットの発達により、お客様が自ら情報を取得し、ホウ酸を指定するケースが増えています。

  • ネットとYouTubeの影響: ネットが発達し、YouTubeなどで住宅系ユーチューバーがホウ酸系を支持していることも理由となり、お客様が「ホウ酸」を指定する事も増えています。
  • メーカーの採用実態: ただし、実際に住宅建築の現場では、大手ハウスメーカーでホウ酸採用を表に出している会社はスウェーデンハウスくらいです。それ以外の会社は今でも農薬系防蟻剤を採用しています。

〜 ホウ酸系防蟻剤SOUFAが解決する構造的ジレンマと顧客への最適解 〜

第2部までで、日本の防蟻対策が抱える「揮発成分による健康リスク」と「ヒノキ神話に基づく薬剤省略」という構造的なジレンマ、そして営業の論理が変革を阻む実態を解説しました。

最終部となる第3部では、この複雑に絡み合った課題を、揮発成分を持たないホウ酸系防蟻剤 SOUFAがどのように解決し、住宅会社と顧客が結ぶべき最適な長期耐久性対策を提言します。


第5章:SOUFAが解決する構造的ジレンマと顧客への最適解

農薬系防蟻剤の健康リスクと、ヒノキ土台の耐久性不足という二律背反のジレンマを、SOUFAのようなホウ酸系防蟻剤は解決できます。

5.1. 揮発成分ゼロの「究極の安全性」

SOUFAの最大の強みは、高気密高断熱住宅のジレンマを根本的に解消する安全性です。

  • 無機物ゆえの安全性: SOUFAはホウ酸と水のみから生成されており、施工後に揮発するのは水のみです。ホウ酸は無機物なので分解されることがなく、揮発しないため、高気密住宅の床下や壁内に施工しても、農薬系のような揮発成分が室内に循環する心配がありません。
  • 健康リスクの解消: これにより、住人が農薬成分を積極的に吸い込むという健康被害のリスクが根本的に解消されます。
    • ただし、一部ホウ酸系防蟻剤には$40%$以上の有機物が含まれているものもあるため、それらが時間をかけて分解され室内を循環する可能性があります。製品選定の際には、有機物含有量を確認することが望ましいです。

5.2. SOUFAが実現する「フェールセーフ」な防蟻

ホウ酸系製剤は、崩壊しつつある「ヒノキ神話」に代わる、確実な防蟻防腐措置を提供します。

  • 食害リスクの解消: ヒノキは心材であってもシロアリに食害を受けますが、SOUFAで処理することで、シロアリは木材を摂食する際にホウ酸を取り込み、その活動が停止します。
  • 土台の確実な保護: 望ましくは、土台には薬剤を多く注入したK3相当の加圧注入材を利用し、その他の木材は全てホウ酸処理を施すことです。
  • ヒノキ土台への併用推奨: もしくは、土台にヒノキを利用するのであれば、その土台に対してもホウ酸処理を行い、その他の木材もすべてにホウ酸処理を行うことが望ましいと言えます。
  • 全構造材処理の推奨: 住宅の木材全体を保護できるのはあくまでも新築時のみです。折角ホウ酸を新築時に処理するならば、コストの面も鑑みて地盤面から1mまでの処理としている会社が多いですが、全構造材に処理する事をお勧めします。

第6章:住宅業界の構造と、顧客主導の変革の時代へ

なぜ、これほどまでに最適解が明確であるにもかかわらず、住宅会社は動かないのでしょうか。それは、住宅会社、防蟻施工会社、そしてメーカーが絡み合う複雑な構造にあります。

6.1. 知識の専門性と標準仕様の壁

  • 住宅会社の専門性の限界: 住宅会社は住宅全体のプロであり、防蟻処理はその無数の知識の一つに過ぎません。その中で防蟻剤の種類に精通している人はほとんどいないと言えます。
  • 標準仕様の固定化: 防蟻施工は、お客様があまり詳しくないことや、まだ見ぬ先の不安をあおることを避けるため、標準仕様として設定され、選択肢となることはまずありません
  • 外注先への依存: 防蟻処理は防蟻施工会社に外注しているケースがほとんどであり、その防蟻施工会社がお勧めするものが標準仕様として採用されやすいです。

6.2. 防蟻施工会社のしがらみとホウ酸への及び腰

  • 白対協の見解への依存: 防蟻施工会社は日本しろあり対策協会(白対協)の協会員であることが多く、白対協がホウ酸に否定的な立場を取っているため、それらの見解や説明をうけてホウ酸の採用には及び腰です。
  • 農薬系メーカーからの情報: 防蟻施工会社は確かにシロアリや薬剤には詳しいと言えますが、その科学的根拠にまで精通しているわけではありません。日本においては、農薬系防蟻剤のメーカーやそれらを基に研究をしてきた人たちの意見や論文が多く、ホウ酸への懐疑的な情報が広がりやすい環境にあります。

6.3.住宅メーカーの「5年後には効果なし」の沈黙

各住宅メーカーはHP等で「地盤面から〇mまで防蟻処理を実施」とPRしていますが、それが5年後には揮発して効果が無くなっていることには当然言及しません。

  • 顧客への案内: お客様から聞かれれば「5年後に再点検、再施工を案内するので大丈夫です」と案内されます。しかし、壁内には2度と同等の施工ができないことや、再施工は床下が主な作業場所でありそれ以外の箇所は施工されないことは教えられません。
  • 一部知識ある施主の行動: 一部の知識のある施主は目ざとくこれらを見つけ、ホウ酸の施工を依頼したり、元々ホウ酸を採用している会社に依頼することになります。

第7章:SOUFAが実現する資産価値の担保と業界への提言

法律や業界の事情が絡み合った世界において、顧客側が自身で調べてすべて最適なものを利用する事はまず無理です。これらを解決できるのは、顧客と直接つながっている住宅会社です。

7.1. 住宅会社への提言

  1. 顧客利益の最大化: 住宅会社は、顧客と直接つながっており、防蟻施工会社やメーカーとのしがらみも特にありません。顧客にとって何が最適なのかを提案できるのは住宅会社です。
  2. 安全性の確保: 高気密高断熱住宅の健康リスクを理解し、揮発成分のないSOUFAなどのホウ酸系防蟻剤へ標準仕様を切り替えるべきです。
  3. 長期耐久性の担保: 従来の5年で効果が切れる農薬系薬剤ではなく、SOUFAによる全構造材処理を標準とすることで、住宅の長期優良化、ひいては顧客の資産価値を担保すべきです。

7.2. SOUFAが示す未来

SOUFAが提供する半永久的な防蟻バリアーは、住宅の構造的健全性を長期にわたり守ります。

お客様が住宅購入時に舞い上がっている状態であっても、真実を伝え、最適な選択を導くことこそが、これからの住宅メーカーに求められる誠実さであり、これからの住宅建築の主流となるべき方向性です。

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