12.16

耐久性区分D1だから防蟻処理は不要だという話について
ホウ酸系木材保存剤, ホウ酸系防蟻剤, 住宅メーカーホウ酸系防蟻剤
木材保存剤には日本木材保存協会と日本シロアリ対策協会の認定があります。そして、これらの認定を取得する為には、JIS K 1571:2010によって評価しその性能基準を満たす必要がります。なお、木材保存剤と言うのは防蟻剤だったり、防腐剤だったりします。要するに決まった試験をして効果が確認されないとダメだよという事です。
なお、SOUFAは日本木材保存協会の認定を有しており、日本木材保存協会の認定は有していません。
さて、何故認定を取得する必要があるのかというと、第3者機関によって性能を担保する為です。また、住宅会社側から見た場合には、住宅建築仕様書に両協会の薬剤が防蟻防腐性能がある薬剤であると記載されているからという事になります。
住宅建築仕様書はフラット35等の住宅ローンを受ける際の基準として定められているものです。住宅は建築基準法に則って建築されますが、多くの人は住宅ローンを使用するので、プラスアルファとして、これらの内容に従う必要があります。
建築基準法においては、「地面から1メートル以内の部分への防腐・防蟻の措置」をするように規定されています。しかしながら、この防蟻防腐処理にかんする具体的な方法は明示されていません。これが混乱の原因になります。
その為、有識者の中には「その措置は薬剤散布に限定されない」と主張する方もいます。これらの主張の背景として、「住宅の防蟻防腐措置には必ず薬剤散布を使わないとならないと思われているがそうでは無い。薬剤を散布すると少なからず健康被害のリスクがある。法律には薬剤散布とは書かれていないのだから、薬剤を使用しない方法でも建築基準法はクリアできる」という主張です。これ自体は間違っておらず、防蟻防腐効果があると「証明」出来るならば問題ないと言えます。
しかしながら、実際にそれらを「証明」しようとするとかなり大変です。それらを証明できるとされている試験機関はあまり多くなく限られています。認定薬剤と同等の効果があると証明する試験にはかなりの費用が掛かりますし、その試験方法が適切であると判断されるかはまた別問題です。そして、それらを仮に提出できたとしても、それが「有効な防蟻防腐措置」として判断されるかどうかは各建築主事等の判断になりますから、認められるとは限りません。さらに、例えばその際の役所側の担当者が防蟻防腐措置について詳しいとは限りません。むしろそこまで詳しい人はほとんどいないでしょう。そうなると、単純に「認定薬剤でないならNG」と拒絶されてしまう可能性がかなり高いです。
では建築基準法には具体的な指示がない防蟻防腐措置については一体何を拠り所にするのが正しいのでしょうか?その一つとして、住宅建築仕様書には日本木材保存協会と日本しろあり対策協会の認定薬剤である事が記載されています。
それ故、両協会の認定薬剤処理を行えば有効な防蟻防腐措置として判断されると読み替えるのが一般的です。自身で1棟の為に様々な試験を行うよりも時間とコストが圧倒的に削減されます。それ故、ほとんどの会社は認定薬剤を利用した現場処理を採用しているわけです。その際に各協会の認定書等が必要になり、更新の時期になると当社にも業者から新しい認定書についての連絡が度々入ります。
また、現代の住宅では住宅ローン金利の優遇措置などもある為、劣化対策等級3という基準を満たす住宅の建築が主になってきています。長期優良住宅やフラット35Sがそれに該当します。
その場合の防蟻防腐措置には「日本住宅性能表示基準・評価方法基準技術解説」において、両協会の認定薬剤である事が記載されています。これはその薬剤を利用した場合は劣化対策等級3に適合した防蟻防腐措置であると判断するという事を意味しています。
少し話がそれますが、劣化対策等級3に適合するには土台に関しても条件があります。それが「K3相当以上のもの」です。これは薬剤をさらに多く注入した材料の事を指します。土台に関しては表面塗布(現場で吹き付ける等)ではダメという事です。これらは実務に携わっている方なら理解されていると思いますので、あまり問題にはならない箇所です。
さて、ここで一部例外があります。その土台に関しても薬剤処理が免除される樹種があります。それが「耐久性D1の樹種の心材は薬剤処理しなくてもいい」というルールです。それ故、例えば「総ヒノキ」の住宅の場合薬剤処理をしなくていいという事になります。ただし、これも注意が必要であくまでも「心材」のみに適用されます。それ故、心材以外が含まれている材料の場合はやはりK3相当の処理が必要であるという事になります。これを勘違いしている会社はかなり多いです。ヒノキの土台であればなんでも処理不要と考えている会社や設計士はかなり多いと言えます。また検査機関もそこまで厳密に理解していないので、OKと判断するケースがあります。「ヒノキならとりあえずOK」と理解している検査機関も実際にはあります。(注:それらを使用した製材および集成材と記載されているので、辺材を含む集成材でもOKとも解釈できます。)
これらの問題点は2つあります。まず一つが土台が心材のみではない事。それ故、事実上の建築基準法違反になります。ただほぼ気が付かれません。確認機関もOKをだしているとなると気が付く人は居ないというのが現状です。
そして、耐久性D1の樹種もシロアリに食害されるという事。当社の自社試験にてヒノキの辺材、心材の食害試験を実施した所、心材も普通に食害を受けました。同時に薬剤処理(表面処理=現場塗布)した試験片も確認しましたが明らかに食害が少ないという事が確認されています。
ですから、実際にはヒノキを土台に使用したとしても薬剤処理をした方が良いです。もしくはK3の土台を最初から導入しましょう。
では、なぜ住宅会社はヒノキ土台を理由に薬剤処理をしないという選択をするのでしょうか?
それは近年の住宅の高気密高断熱化が影響しています。高気密高断熱住宅の場合、建物内の空気の出入りを大幅に制限します。制限と言うよりはほど隙間が無いように住宅を建築します。その場合、当然に木材に処理された防蟻剤は室内に揮発する事になります。他に逃げ道がない為です。
高気密高断熱住宅の場合、全館空調で床下の空気も循環させるタイプの物が多く採用されています。
その場合、床下に施工した防蟻剤の揮発成分が全部屋に送り届けられることになります。これは住人にとって望ましい事ではありません。従来の住宅であれば、あくまでも床下、壁内で揮発していた農薬成分でしたが、積極的に室内に送り込まれるという事になると、当然にそれら農薬系防蟻剤の施工は嫌がられます。昨今のネオニコチノイド系防蟻剤はだいぶ安全になったと言われていますが、それはあくまでも積極的に摂取しない状況が想定された上です。成分自体が安全であるというよりは容量が少ないので影響が少ないと考える方が自然です。
住宅会社もその様な事情はある程度理解しているので、防蟻剤の施工をためらいます。その際に都合がいいのが「ヒノキの土台、柱、筋交い等を利用して薬剤処理を省略する」と言う方法です。これであれば、薬剤が住宅内に揮発する事はありません。そして、そこに近年採用が進んでいる防蟻基礎パッキンを組み合わせる事で薬剤に頼らない防蟻処理が完成したとPRすることになります。なお、この防蟻基礎パッキンはシロアリに対する効果は認められていますが、建築基準法でいうところの有効な防蟻防腐措置には該当しません。メーカーも該当しない旨の注意喚起を行ってます。ですから、あくまでもヒノキを利用したから薬剤処理を省略するという論理という事になります。ただ、住宅会社によってはこの辺りをまぜこぜで理解していて、防蟻基礎パッキンを使用しているから建築基準法OKと考えている方がいます。
しかし、先ほど述べた様にヒノキは心材であっても食害を受けます。たとえばヒノキとスギが並んでいたら杉が先に食害をうけますが、それが終われば次はヒノキが食害を受けます。シロアリは何でもかじるので順番に、やや差があるだけです。
では、なぜヒノキは防蟻防腐措置が不要な樹種という事になったのでしょうか?これは諸説ありますが、一部有識者によると薬剤を嫌う団体の影響で、あまり学術的な根拠は無く決定されたと言われています。実際に、シロアリに効果のあるとされる成分に「ヒノキチオール」という成分がありますが、これは実は日本のヒノキにはほとんど含まれていません。(少なくとも現代のヒノキには)もともとタイワンヒノキに多く含まれている成分です。しかし名前が「ヒノキチオール」という為、日本のヒノキに多量に含まれていると勘違いしている人が多く、住宅会社の大工出身の社長等でも「ヒノキにはヒノキチオールと言う成分が含まれていてシロアリに食われない」と発言したりします。もしかすると、昭和時代のヒノキにはヒノキチオールが多量に含まれていたのではという説も一部でありますが、少なくとも現代のヒノキにはヒノキチオールがほとんど含まれていないので、シロアリに対する効果は限定的です。
ですから、望ましくは住宅全てに揮発成分の入っていない加圧注入材を利用する事がよいのですが、そんな事はコスト的に無理なので、出来れば土台は加圧注入材を利用して、その他の木材は全てホウ酸処理をする事です。
もしくは、土台にヒノキを利用するのであれば、その土台に対してもホウ酸処理をし、その他の木材もすべてにホウ酸処理を行う事が望ましいと言えます。
SOUFAはホウ酸と水のみから生成されており、施工後に揮発するのは水のみです。といってもその水も住宅の完成前までには乾いているので、なにも揮発しません。ホウ酸は無機物なので分解される事が無い為です。
ホウ酸系防蟻剤は総じて安全性が高いとされていますが、一部ホウ酸系防蟻剤は40%以上の有機物が含まれているようなので、それらが時間をかけて分解され室内を循環する可能性があります。それらは各メーカーに確認してください。
住宅の木材全体を保護できるのはあくまでも新築時のみです。
そして、これに絡み合って住宅会社側の受け取り方がいくつかあります。住宅会社は住宅全体のプロです。しかしながら木材それ単体の保存処理にはそこまで詳しくありません。それ故、防蟻剤の種類に精通しているという事はほとんどないと言えます。さらに、これが住宅会社の営業マンという事になってくるとそれらに詳しい人はほぼ存在しません。なぜなのかと言うと、住宅には無数の知識が必要であり、その中で防蟻処理はその一つに過ぎないからです。他に覚える事が沢山あります。
住宅会社には標準仕様というモノがあり、防蟻施工に限らずあらかじめ設定されている材料や施工方法があります。例えばキッチンであれば複数の選択肢から選ぶことが出来るように設定されていますが、防蟻施工は選べるように設定される事はまずありません。お客様はあまり詳しくないですし、またまだ見ぬ先の不安をあおる事になる為、住宅会社は積極的に話をしない項目です。
防蟻処理は防蟻施工会社に外注しているケースがほとんどです。その防蟻施工会社がお勧めしてくるものに意見が偏ります。防蟻施工会社はその道のプロですから薬剤等にも詳しいです。それ故、それらのアドバイスを参考に一般的な防蟻剤での施工が標準仕様として採用されます。その際に、おそらくホウ酸の話も出てくることでしょう。しかしながら、防蟻施工要領等を定めている日本しろあり対策協会はホウ酸に否定的な立場を取っています。そして、施工会社は日本しろあり対策協会員である事が多い為、それらの見解や説明をうけてホウ酸の採用には及び腰です。また、防蟻施工会社は確かにシロアリや薬剤には詳しいと言えますが、その科学的根拠にまで精通しているわけではありません。それらはやはりメーカーや協会、大学、研究者等が精通しています。その中ではやはり、日本においては農薬系防蟻剤のメーカーやそれらを基に研究をしてきた人たちの意見や論文が多いと言えます。
近年、それらの研究者の中にも「住宅完成後、時間が経過した後の壁内木材の防蟻防腐について」疑問を抱く人が出てきました。農薬系防蟻剤は一定期間で分解されて亡くなるように設計されています。これを「環境の為に、残存せず、分解する」と説明されるとなんとなく良さそうなイメージを持ってしまいますが、自分が住んでいる住宅の壁内木材の防蟻防腐性能が環境の為に無くなってしまうのは本来であれば受け入れられないでしょう。
防蟻施工会社はそれ故、5年毎のメンテナンス工事を勧めてきますが、その工事では壁内への防蟻剤散布は実施されません。と言うか実施できません。なぜか、この点に関しては議論されている論文等をあまり見かけません。
各住宅メーカーはHP等で「地盤面から●メートルまで防蟻処理を実施」と記載してPRしていますが、それが5年後には揮発して効果が無くなっている事には当然言及しません。お客様から聞かれれば「5年後に再点検、再施工を案内するので大丈夫です」と案内します。しかし、壁内には2度と同等の施工が出来ない事、再施工は床下が主な作業場所でありそれ以外の箇所は施工されない事は教えられません。施主も住宅購入時には舞い上がっていますから、そこまで詳しくは突っ込みませんし、分かりません。一部の知識のある施主は目ざとく見つけてホウ酸の施工を依頼したり、元々ホウ酸を採用している会社に依頼する事になります。
しかし、ホウ酸に関してもSOUFAは全棟処理を推奨していますが、地盤面から1mまでの処理としている会社が多いです。コストの面も鑑みてその様に判断されているのかと思います。折角ホウ酸を新築時に処理するならば、全構造材に処理する事をお勧めします。
上記の様な、法律や業界の事情が絡み合った世界です。顧客側が自身で調べてすべて最適なものを利用する事はまず無理です。これらを解決できるのは住宅会社だと思っています。住宅会社は顧客と直接つながっています。そして、防蟻施工会社やメーカーとのしがらみも特にありません。顧客にとって何が最適なのかを提案できるのは住宅会社です。












