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JIS K 1571:2010 附属書Aについて:ホウ酸製剤の「用途限定」と住宅会社が求めるべきもの
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ホウ酸系防蟻・防腐製剤は、その安全性と持続性から、住宅の劣化対策として注目されています。しかし、この薬剤の性能を評価するJIS規格には、特殊な条件が設けられており、その解釈をめぐって誤解が生じることがあります。それらの関係が理解にしにくいということで当社にご相談いただく事がしばしばあります。それらについて説明します。
「JIS K 1571:2010 附属書A」としらべると何やら難しいそうな試験方法にたどり着きます。しかし、これを見て多くの方は
1. JIS K 1571:2010 附属書Aとは?
防蟻剤はJIS規格の試験に則って性能を確認します。JIS K 1571:2010は、木材保存剤の性能を評価する規格ですが、附属書Aは、特定の用途に限定された薬剤の防腐・防蟻性能を評価するために設けられた例外的な試験方法の規定です。
附属書Aが想定する「用途限定」の条件
附属書Aは、ホウ酸製剤の水溶性という特性を考慮し、薬剤が溶脱しない環境を前提としています。溶脱と言うのは流れ落ちる事を指します。
| 項目 | 附属書Aが規定する内容 | 意味合い |
| 対象部位 | 「屋根、外壁板などによって風雨から遮断され、かつ、地面に直接接触しない建築用木材」 | 屋内や壁内など、直接雨水がかからない部位に用途を限定しています。 |
| 耐候操作 | 溶脱操作(水に浸す試験)を課さず、揮散操作(揮発分を揮散させる試験)のみを課す。 | 薬剤の主成分であるホウ酸が水で比較的容易に溶け出すため、溶脱を前提とした試験を免除しています。 |
| 試験の省略 | 野外試験は省略される。 | 長期的な屋外暴露での性能評価は行われません。土壌処理剤としてはNG。 |
| 明示義務 | 試験結果は、適用範囲が限定されていることを使用者側へ明示する。 | 薬剤の性能が、特定の使用条件に依存することを明確にしています。 |
結論として、附属書Aは「用途が限定されている」ことを前提とした試験規定であり、その規定自体が、ホウ酸製剤の「水に溶けやすい」という弱点を補うために設けられた例外措置であると言えます。一般住宅の防蟻剤として使用する分には特に制限はなく有効な防蟻剤として理解いただいて問題ありません。劣化対策等級3を満たしています。
2. 住宅会社からの要求「付属書Aをください」の誤解
ホウ酸系製剤を採用する際、稀に住宅会社から「附属書Aをください」と求められることがあります。しかし、これは規格の正確な意味を理解していない、不適切な要求です。
住宅会社が附属書Aを求める必要はありません
- 附属書Aは「試験方法」の規定である:附属書Aは、ホウ酸製剤のメーカーが性能を評価するために用いる「試験方法」の名称です。住宅会社が確認すべきは、試験方法そのものではなく、その試験方法に基づいた「最終的な認定」と「施工仕様」です。しかしながら、検査機関の担当者もこれらに対する知見を有していない事があり、「付属書Aをメーカーからもらってください」と言われる事があるようです。「認定書」をくださいと言えば大体の問題は解決します。
- 認定の主体は協会である:ホウ酸製剤の認定を行っているのは、(公社)日本木材保存協会です。住宅会社が確認すべきは、ホウ酸製剤がこの協会から「JIS K 1571 附属書Aに定める範囲」の適用として認定を受けているかどうか、そして住宅性能評価・表示協会が定めた評価上の取扱い(劣化対策等級3に適合するかどうか)です 。
- 求められるのは「施工マニュアル」:住宅性能評価・表示協会も、設計評価に必要なのは、「認定された薬剤名(商品名)」と「適用範囲」が明示された図書、および「施工マニュアル」の添付であるとしています 。住宅会社は、「試験方法」ではなく、「施工マニュアル」に則り施工した記録(施工写真等)と、それに基づく保証を確保することが重要です 。
住宅会社が本当に求めるべきは、「附属書A」という名称ではなく、以下の文書です。
- ✅ (公社)日本木材保存協会の認定書(認定番号A-XXXXなど)
- ✅ 認定された薬剤の施工要領書
ホウ酸系製剤は、安全性が高く、住宅性能評価での等級取得に有効ですが、その特性を理解し、「用途限定」を厳守した施工と適切なリスク管理が不可欠です。



