2025
12.15

知っておきたい「処理免除」の真実:高耐久性樹種にも潜むシロアリ・腐朽のリスク

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木造住宅を建てる際、土台や柱といった構造材は、建築基準法や各種性能基準に基づき防蟻・防腐処理が義務付けられています。しかし、一部の「耐久性の高い樹種」については、薬剤処理が免除される規定が存在します。

この記事では、この「処理免除」の背景にある木材の構造的な弱点と、外来種シロアリの脅威が増す現代において、処理免除の木材を使用する際のリスク、そして確実な対策の必要性について解説します。

1. 「耐久性の高い樹種」とは?

建築基準法や住宅性能表示制度(劣化対策等級3など)において、防腐・防蟻措置が不要とされる樹種が存在します。これらは一般的に「特定D₁樹種」「耐久性区分D₁」などと呼ばれます。

  • 認定の根拠: これらの樹種は、主に心材(木材の中心部)が、腐朽菌やシロアリに対する抵抗性の高い成分を多く含んでいるため、耐久性が高いと評価されています 。※あくまでも心材です。
  • 代表的な樹種: ヒノキ、ヒバ、クリなどがこれにあたります 。
  • 免除規定: 住宅性能表示の劣化対策等級3やフラット35仕様書では、これらの「耐久性の高い樹種を使うこと」が土台の防腐・防蟻措置の選択肢の一つとして記載されています 。その中でも、日本農林規格の中でも、ヒノキ、ヒバ、ベイヒ、ベイスギ(ウェスタンレッドシダー)、ケヤキ、クリ、ベイヒバ、タイワンヒノキが該当します。日本で免除の際に使われるのはヒノキが多いです。

2. 処理免除の木材が抱える「構造的な弱点」

しかし、これらの高耐久性樹種が持つ耐久性は、木材の部位によって大きく異なります。

① 耐久性が低い「辺材」のリスク

木材の断面は、中心の心材と外側の辺材に分けられます

  • 心材(中心部): 耐朽性・耐蟻性が高い部分です 。
  • 辺材(外側): 辺材は水分や栄養分(糖類やでんぷん)を多く含んでいるため、樹種を問わず心材よりも耐朽性・耐蟻性が低い(腐りやすい・シロアリに弱い)ことが確認されています 。

建築材料として流通する角材や集成材には、この耐久性の低い辺材が含まれているケースが多いと言えます。

  • 公的機関の指摘: 住宅性能表示の技術解説やフラット35仕様書でも、「辺材が含まれる場合は、防腐・防蟻措置を講ずることが望ましい」と記載されており、辺材の脆弱性が認識されています 。一部ネット記事など建築基準法では必ずしも薬剤処理とは規定されていないという主張を見かけます。確かに建築基準法では薬剤処理に言及はされていません。しかし、近年では住宅性の表示制度の劣化対策等級3をクリアしている事が銀行融資の条件となっている事も多い。そして、その規定には薬剤処理が明記されており、事実上は薬剤処理をすることが前提となっている。ただし、その薬剤処理と同等の防蟻効果を証明できれば確認機関がOKを出すケースも仕組み上はあり得る。(※そこまで手間をかけるのであれば、認定取得済みのホウ酸系薬剤等で処理する方が結果としてコストが低い。)
  • 現実の被害: 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の被災調査では、倒壊した住宅の土台や柱に腐朽・蟻害が目立ち、特に「ヒノキ土台、柱にも心材部分まで達する腐朽・蟻害が多く認められた」ことが報告されています 。
  • 外壁を通気工法にした場合は土台に関しても緩和措置がある。

② 辺材の劣化は「耐震性」に直結する

辺材が腐朽・蟻害で劣化すると、住宅の耐久性だけでなく、構造的な強度にも重大な影響を与えます。

  • 木材同士を緊結する接合金物が、耐久性の低い辺材部に打ち込まれることはよくあります 。
  • 辺材部が腐食すると、その部分の木材が痩せて金物が効かなくなり、接合部の耐力が低下します 。
  • これは地震時に構造体が本来持つべき耐震性能を大きく損なうことにつながります。

3. 外来種「カンザイシロアリ」の脅威と確実な対策

近年、アメリカカンザイシロアリのような外来種が日本全国に拡大しており、従来の「処理免除」の考え方を再検討する必要性が高まっています。

  • カンザイシロアリの食性: 在来種のヤマトシロアリは湿潤な木材を好みますが、アメリカカンザイシロアリは樹種を問わず乾燥した木材を食害します。通気構造で乾燥しているから問題がないという概念は通用しなくなっています。
  • 潜行性の被害: カンザイシロアリの被害は年輪を大きく跨ぐため、表面からは食害が分かりにくいという特性があり、発見が遅れがちです。

こうした新たな脅威に対して、「辺材が含まれているから」「環境が湿潤ではないから」といった限定的な理由で防蟻処理を省略することは、長期的な住宅の健全性を担保できません。上記のリスクを負うくらいなら、新築時に多少割高になっても全棟防蟻剤処理をしたいと考えるユーザーが増えている事も理解できます。

SOUFAによる「フェールセーフ」な保存処理

住宅を長期にわたって安全に維持するため、耐久性の低い辺材部を含めたすべての構造材に、安全かつ確実な保存処理を施す「フェールセーフ」の考え方が推奨されます 。

  • 確実な防護: SOUFA(ホウ酸系防蟻剤)は、人体への毒性が極めて低く(食塩よりも低い毒性)、一度処理すれば効果が半永久的に持続します。ネオニコチノイド等の薬剤でも人体への影響は極めて低くなってきたと言われています。しかしながら、内容物質等を確認すると毒性があるものも多く、揮発する設計となっているために、住宅構造部全体に施工する事にはリスクがあります。施工により住宅内部に薬剤がゆっくりと揮発してきてしまう恐れがあるからです。それ故、一般的には地盤面から1mまでの施工としている会社がほとんどです。
  • 全構造材処理: 土台から柱、梁に至るまで、すべての構造材をホウ酸処理することで、カンザイシロアリやシロアリ、腐朽菌、キクイムシなど多岐にわたる生物劣化の攻撃を長期にわたり防ぎます。
  • 経済性: 初期の処理コストはかかりますが、5年ごとの再処理費用や、将来的な補修・建替えのリスクを考慮すれば、長期優良住宅を目指す上で最も費用対効果の高い選択肢となります。多くの防蟻剤は5年程度で成分が分解されるように設計されています。床下や土台は潜れば確認、再施工できる箇所ががありますが、柱や間柱などは住宅完成後の施工は基本的にできません。しかし、それらの施工された成分も一定期間で効果を失ってしまいます。それらに関してはあまり議論されていません。

住宅の長寿命化と資産価値の維持のために、処理が免除される木材であっても、ホウ酸系保存剤SOUFAのような確実な対策を講じることを強く推奨します。

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