10.10

基礎断熱住宅のシロアリ対策は不要なのか?
日本で主に注意すべきシロアリは、ヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリです。1994年に国土交通省はべた基礎構造を使用すれば新築時の土壌処理は省略できると判断を示しました。今ではほとんどの新築住宅がべた基礎になっています。シロアリは1㎜の隙間があれば侵入すると言われており、基礎のクラック、打ち継ぎの隙間、配管の隙間から床下に侵入する可能性があります。
結論から言うと、基礎断熱住宅でもシロアリ対策を十分に行う必要があります。
シロアリが侵入すると木材や断熱材をかじり内部に侵入してゆきます。べた基礎にして、隙間を塞ぐことで物理的なバリアを作ることが出来ますが、その隙間が100%埋まるかどうかは施工会社の技術力に頼る事になります。また隙間を埋めるシール材は時間がたつと瘦せてくる為、定期的な観察や再処理が必要です。他にも、侵入が想定される箇所にメッシュを設置したり、基礎パッキンでシロアリ返しの様なものを設置したりと様々な方法がありますが、それらを施主である住民が気に掛ける事には限界があります。
そこで、構造材の木材保存処理が必要だと考えられます。ただ、日本では全構造材に木材保存処理が施されている事はほとんどありません。一部の地場ビルダーや工務店が差別化として打ち出している以外は、各社オプションサービスであったり、またはその取扱いが無いとうのが現状です。全構造材処理という事になると、ホウ酸処理以外は難しいという背景も影響しています。
日本で主流となっている合成殺虫剤系の防蟻防腐剤は、一定の毒性があり(※現在はだいぶ安全なものも出てきていますが)、揮発性がある為、構造材すべてにそれらを処理する事は望ましくありません。それ故、建築基準法では地盤面から1mまでの処理する事になっており、各社それに準じています。
※近年合成殺虫剤も揮発しない成分の物が使われる事が増えてきたようです。主に光や紫外線などで分解され、毒性もかなり低く、数字を見た限りでは食塩やホウ酸よりも低い数値でした。ただ、これらの説明においてもやはり5年程度で効果が無くなると示されており、その際の壁内構造部の保護に関しては触れられていません。
木材住宅ではプレカット木材が構造材として利用されます。それらをすべて保存処理する事が理想的です。方法は主に3つ考えられます。合成殺虫剤は望ましくないので、ホウ酸系防蟻防腐剤を検討します。
まず1つ目が、現在主流の現場処理、工場処理(表面処理)です。住宅が組みあがった段階、または、工場等で事前に構造材全てにホウ酸系防蟻防腐剤を吹き付け、または塗布処理します。ホウ酸は化学的に安定で、無機物です。木材から揮発する事が無い為、長期間木材を保護します。合成殺虫剤(ネオニコチノイド系)では、中々このような事は出来ません。

そして2つ目が浸漬処理です。これはプレカット材を溶液のプールに沈めて全体に薬剤を付着、浸漬する方法です。施工施設があればより素早く処理が可能です。

浸潤槽イメージ
3つめが加圧含侵です。専用の装置に薬液を充填し、加圧減圧の作用を利用して薬液を注入する方です。
3つ目はかなり大掛かりな装置が必要であり、住宅会社はプレカット会社が必ずしも対応できるものではないので、あまり現実的ではないかもしれません。(ここまで実施すると差別化として提案しやすいレベルですね。)

加圧含侵装置のイメージ
さて、例えば基礎断熱を採用している住宅の場合を考えてみましょう。

高気密高断熱住宅の床下イメージ
基礎断熱や高性能住宅の場合、完成後床下から見える箇所は一部の土台や大引きだけになり、その他構造材は隠れてしまいます。これは、外壁構造材や屋根組においても同様です。この状態だと構造材を再処理する事はほぼ不可能だと言えます。
一般的に普及している合成殺虫剤を利用した木部処理は5年毎の再処理が前提(成分が揮発する為)となっており、この状態で再処理の為、床下に潜ったとしても薬剤を施工できる場所はかなり限られるという事が分かります。また、外壁構造材は既に壁の中に入っており、それらの再施工は事実上不可能です。そして、これらの高気密高断熱住宅の場合、床下の空気も住宅内に循環するシステムを採用している事があります。その場合、そもそも科学的に不安定な合成殺虫剤(※そもそもその様に設計されている)は使用できません。何故なら、その成分が揮発し住宅内に回ってしまうからです。全館空調システムが導入されている場合は、床下も喚起されるため注意が必要です。
そこで、各住宅会社は揮発しない加圧注入された土台や大引き等を採用します。これは安心感があります。しかし、柱や筋交いなどは1mまでの合成殺虫剤の塗布となているケースが多いようです。そうなると、地面から近い部分は守ったのに、そこを超えて入り込んでくるシロアリに対しては、おおよそ5年程度で無防備な状態になります。それでも、定期的に床下や住宅周りを点検して蟻道の観察等を行えば、ある程度は安心できます。
ただ、ここでもいくつか課題があります。それが上記でも触れた再処理についてです。5年に一度再処理をしないと保証が切れてしまうのです。例えば新築した住宅が5年経過して、有償の防蟻点検の時期が来たとします。その防蟻処理を行わない方がかなり多いと言われています。そうなってくると、外壁構造材は既に薬剤が揮発していて、床下の見える木材も無防備(※加圧注入材は大丈夫)という状況であり、シロアリの恰好のえさ場になります。この様な新築住宅はかなり多いです。
会社によってはこれらを回避する、またコストダウンの為にそもそもシロアリ対策をしないという会社も存在します。現在の建付けでは、ヒノキの土台や柱等を使用すると、防蟻防腐処理を(しなくてもOK)という事になっています。厳密にはヒノキの心材を使用した場合という事なのですが、そこまで詳しい検査員はあまり多くないので、(ヒノキはシロアリに強いから大丈夫)という理由で検査をパス出来ます。ところが、別の記事でも述べていますが、ヒノキは辺材だけでなく心材もシロアリの食害にあいます。
日本では、ヒノキ信仰があります。檜風呂は憧れという方も多いのではないでしょうか?このヒノキ神話には理由があります。それがヒノキチオールと言う物質です。これは耐久性の高いタイワンヒノキから成分を分離しヒノキチオールと命名しました。この物質が日本の青森ヒバにも含まれており、耐久性が高いと言われています。ところが、ヒノキチオールは日本のヒノキにはほとんど含まれていません。そしてヒノキチオールという名称が独り歩きを始め、ヒノキは耐久性が高い樹種であると考えられるようになりました。今でも、この考えは古くを知る建築業界人や大工などに伝わっており、大工出身社長の工務店などでは【当社はオールヒノキでシロアリに強いので防蟻処理は必要ありません】と宣伝している事があります。
ネオニコチノイド系(合成殺虫剤)が段々と規制されてゆく方向に動くことが予想されて久しいですが、これが中々動いてゆきません。ホウ酸系防蟻防腐剤が日本木材保存協会の認定薬剤となったのは2011年ですから、この記事を書いている段階(2025年)で14年経過しています。その頃は、日本も一気にホウ酸系に移行されるのかと思っていたのですが、現時点ではネオニコチノイド系が市場のほとんどを占めており、ホウ酸系はあまり普及していませんね。
これからの普及に期待しています。













