2022
11.02
構造用合板差別化

ホウ酸処理の構造用合板の可能性(合板へ付加価値付与)

 2022年現在、ホウ酸処理された状態で製品化されている構造用合板は製造されていません。これには様々な理由が考えられます。しかし、もしホウ酸処理構造用合板が製造販売された場合、とても大きなビジネスになると考えています。例えば、地場の木材業や構造用合板の差別化、新製品開発などの可能性を秘めています。かなりターゲットの狭い記事になる為、興味のある方のみご覧ください。

 まず、製品が存在しない理由として、その必要性が認知されていない事があげられます。そもそも住宅のホウ酸処理自体の認知度が低く、大手ハウスメーカーでは採用されていません。ハウスメーカーとしてはスウェーデンハウスがティンボアにて処理された木材を使用しているくらいでしょうか。お客様からの要望で局所的に使用するケースはあるかと思いますが、住宅会社側もホウ酸処理を知らないことが多いという印象です。これは弊社で展示会に出展した際に、様々な住宅会社の設計、工務担当者とお話をして分かったことです。

 ホウ酸処理にて必要個所を最低限の施工した場合、材料費用は決して高価ではありません。例えばSOUFAの場合、定価でも1万円程度です。

 大手メーカーの中にはパネル工法や2×4工法を使用している会社が多数あります。その場合、在来工法に比べて防蟻防腐施工を必要とする面積が多くなります。それゆえ、材料費用が高くなります。これはホウ酸系防蟻防腐剤に限った話ではなく、従来品の薬剤でも同様ですね。

 パネル工法の場合、ルール上では構造耐力上主要な部に対して防蟻防腐処理をする必要があるので、柱だけではなく、構造用合板に防蟻防腐処理する必要が出てきます。ここで、重要になってくるのが、薬剤を散布するタイミングです。
 柱の外周面(4面)に、薬剤を散布する前に、構造用合板を貼ってしまうと、外周面に散布できなくなってしまいます。正しく施工するためには、まず構造用合板を貼る前に柱の外周面に散布し、さらに、施工する構造用合板にも散布するという手順が必要になります。これは、なかなか外注の防蟻施工会社では対応してもらえないケースが多いようです。
 実際に、かなり作業性が悪いため、この通り施工できていない会社も多いのではないかと推測されます。ただし、これはあくまでもルール上という事であり、防蟻処理にそこまでコストをかける会社は少ないので、実際にはそこまで手間をかけている会社はほぼないでしょう。

 しかし、その段階ですでに防蟻防腐処理済みの構造用合板が販売されていればそれを張り付けるだけで作業が終わる為、防蟻施工は1回で完了します。付加価値のついた合板になる為、合板の価格は上がりますが作業人工が減る為全体のコストアップにはならないと考えられます。また、合板メーカーも付加価値を高めた製品を販売できるため、利益率アップが狙えます。

 ただし、これらの製品を製造するためには合板会社側に、いくつかのハードルがあります。まず、製造ストックが出来る事。いうまでもなく、既存の農薬系合成有機防蟻防腐剤は3~5年で揮発し効果が消滅します。その為、製造パネルの在庫ストックには使用期限が付きまといます。またその揮発した薬剤は工場内に充満することになる為、健康被害を引き起こす可能性があり、積極的に製造したがる会社は少ないはずです。(※製造している合板会社自体は存在しているようです。)

 これがもしもホウ酸系薬剤だった場合、ホウ酸は無機物で揮発しない為、使用期限を定める必要はありません。揮発する成分は水のみなので作業員に負担も農薬系合成有機防蟻防腐剤よりも圧倒的に低くなります。

 ただし、そのほかにもクリアしなければならない問題があります。それは工場生産用の防蟻防腐認定を薬剤が有しているという事です。なお、SOUFAは現場塗布、工場処理両方の薬剤認定を有しています。

 では、なぜホウ酸系薬剤にて処理された防蟻防腐合板が存在していないのでしょうか?それは冒頭に記した通り、ホウ酸処理自体の認知度が低いためだと考えられます。また、それらを生産するためにはホウ酸系薬剤を自社開発もしくは外部調達する必要がありますが、ホウ酸系の薬剤はその薬剤自体がノウハウの塊なので、外部から調達するには高いハードルがあります。要するに薬剤を入手することが出来ないという事です。また、自社開発するといっても一朝一夕で開発できるものではない為、上記を実現するためには薬剤を供給してくれる外部業者と協業することが必須です。そのような事情から、合板会社はこれらに取り組むことはなかなか難しいようです。

 その他にも、ビジネスとして考えた際に「売れない製品は製造できない」という合板会社側の課題もあります。そもそも、現在は市場にホウ酸系薬剤処理の構造用合板製品が存在しないので、当然誰も使用していません。ですから、売れている実績はなく、合板会社も製造を躊躇することになります。ではハウスメーカーへ使用してもらうように営業をかければいいじゃないかと考えますが、ハウスメーカー側もまだ存在しない製品を採用はしてくれません。

 ですから、それらを打開するためには、まずは合板会社が製品を製造をする必要がありますが、上記の話に戻ってしまい「売れない製品は製造できない」というループにはまってしまいます。これは防蟻防腐剤に限らず、新規開発には必ず付きまとう課題です。新規市場を開拓するためには越えなけれならない壁だと考えています。

 当社はホウ酸系薬剤を製造する化学メーカーです。その為、地場の木材会社や様々な建材会社、または第3セクター系の団体などからご連絡をいただくことが多々あります。それらのお問い合わせ内容の多くは「地場産木材の高付加価値化による差別化」です。正直なところ地場産木材にはこれといった競争力がありません。コストでは海外製品に勝てず、かといってコスト差ほどの性能差も提示できない。その為、付加価値をつける事で競争力を獲得したいと皆さんが考えます。「皆さん」が同じことを考えるので結果としてそれは差別化にはなりません。ただ、各企業や担当の方はそのような事情は知らないので、自社だけのアイデアだと認識をする事になります。これは構造上仕方のない事です。

 ただし、このケースは先に進まないことが大半だといえます。なぜなら、「良いものを作れば売れる」という考え方だからだと思っています。これらは上記と同じで「売れない製品は製造できない」というループに最終的にははまってゆきます。

 もしも、それらを打開できるとしたらどうでしょうか?ホウ酸処理構造用合板にはその可能性が十分にあると考えています。当社は薬剤を供給することが可能です。そして、構造用合板の製造パートナーを探しています。協業をご検討いただける方がいらっしゃれば是非ご連絡ください。

追記

その後、色々と調べたり、合板会社の方とお話をする機会がありました。既に複数の会社から下記のような薬剤を加圧含侵した防蟻防腐合板は製造販売されていることがわかりました。

各カタログ資料等を見たところ、使用してある薬剤は比較的安全性が高いものであるという事になっていましたが、薬剤によって農薬として毒性に関して注意されているものもあるようでした。ただ、公的機関の研究結果等も公開されており、それらを見ると効果に関しては申し分なく、残存期間も問題なし。また、溶脱(揮発は不明)に関してもほとんど起こらないと読み取ることが出来ました。それゆえ、すでに販売されている物を使用すれば構造用合板としては十分であると考えられました。

ところが、ここに盲点があると考えています。というのも、オーバースペックすぎるのではないかという事です。実際の建築現場ではここまで高性能の加圧注入材は要求されません。ベニヤ全体に規定量の薬剤が吹き付けてあればそれで十分なのです。価格まで調べ切れていないのですが、薬剤加圧注入処理合板は間違いなく高コストです。それを住宅会社が採用するかというと、否となる事でしょう。

この辺りの差を埋める事にビジネスチャンスがあるのではないかと考えています。

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