2020
07.31

不燃木材の欠点(液だれ、白華)

不燃木材と言うのは簡単に燃えない木です。燃えない木を制作する為に、難燃剤と言われる薬剤を人工的に注入します。少し否定的な内容になってしまいますが、現状について正確にお伝えしたいと思います。

木材に使用される難燃剤は、ホウ酸、リン酸、その化合物がほとんどです。高性能な木材なので、様々な箇所での用途があると思われていますが、実際にはあまり普及していない、普及が進んでいないと言うのが正直な所です。と言うのも、使用する為の決定的な欠点があり、その解決がかなり難しいからです。

主な欠点は2つです。それが液だれと白華です。まずは液だれから説明します。

こちらの写真をご覧ください。汗をかいた様に水滴がついています。

7月の梅雨時期に半屋外の雨があたらない、風通しは悪くない場所において経過を観察したリン酸系の難燃剤を含侵した不燃木材サンプルです。こちらは某メーカーから製品として現時点でも販売されている製品です。表面の水滴は薬剤の溶脱だと思われます。リン酸が空気中の水分に反応して液だれ現象を起こしています。また、全体的に湿った風合いになっており、この状態で建築の意匠剤として使用する事は、実際には難しいと言えます。

ちなみに下記不燃木材は濡れている様に見えます。これは湿気を吸収しているからです。濡らしたわけではありません。

写真だと分かりにくいのですが、乾いた難燃剤は表面に固まってざらざらと残り、またはべた付くといった状態です。これが新品状態から約7日間で発生してしまう為、扱いにくい材料だと言わざるを得ないでしょう。

ここから更に1か月(8月)ほど経過観察しました。夏になり湿度が下がり、木材が乾燥してきました。とは言え小口はまだ湿ったままです。溶脱、液だれしたリン酸系薬剤が表面で固まりざらざらとし、白くなっています。触るとざらざらになっているので意匠面への使用は難しいといえます。

対策として考えられるのは、表面のコーティング、塗装なのですがコート剤が可燃性なので、不燃材料として認められなくなるのでご注意ください。また、手の届く範囲であれば、液だれが発生した時点で水拭きすると表面の固着を減らす事が可能です。ただし、この場合は薬剤を木材表面から取ってしまう事になるので、厳密いうと難燃性が低下することになります。木材の難燃剤は基本的には水性です。ですから、水やお湯で溶かすことが出来ます。

しかし、上記の様に表面に固まってしまっている場合は水拭き、お湯拭きで拭い去る事は難しいです。削りなおさないと綺麗な表面は出てきません。

こちらの不燃木材もリン酸系の難燃剤が含侵されている別のメーカの製品です。液だれや白華対策がされている不燃木材との事ですが、板目にそって表面が白くなって白華現象が起こっています。液だれこそ起こしていませんが、全体は湿気を吸収し、乾燥材とは言いにくい状態になっています。前出のメーカー品よりは圧倒的に扱いやすいと思われますが、とは言えこちらも7日間でしっとり湿り、全体的に色味が変わり、白華が起こってしまっています。数年化使用するような場所への適用は難しい問い合わざるを得ません。

ここから更に1か月ほど(8月)同じ場所において経過観察しています。白華が進行している様に見えます。白華対策がされているとはいえ、このくらいの期間で一定の白華が見られるので、意匠面での使用は難しいといえるかもしれません。やはり、不燃木材の白華対策は難しいですね・・・。

こちらが初期の状況です。白華していません。ビニール袋等に入れて湿気を防いでおくと時間が経っても大きな変化はありません。

SOUFAの含侵サンプルがこちらです。今のところ白華はしていません。

当社は創業以来不燃木材の研究をしていますが、液だれ、白華の問題はまだ解決していません。木材は日本的な建築物を象徴する材料なので、オリンピック開催に合わせて木造建築が注目を浴びています。また、大型建築物での採用も実際には出てきているようです。しかし、それらの建築物も液だれ、白華の現象を将来的に抱えざるをえないでしょう。

当社は元々災害復旧を目的としたNPO団体を起源としています。その中で、不燃木材の研究をしており、現在も研究中です。しかし、そんな業界内部の当社から見ても、コスト感や扱いにくさなどを考えると不燃木材の普及は現時点では考えにくいと思われます。

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